空気から清潔空間をこう変える

天井裏にある1台の機器で浴室と洗面脱衣室の2空間を変える

浴室・洗面脱衣室を家事ラクと癒しの空間へ、ヒートポンプが叶える、サニタリーの新常識

「雨の日の部屋干し、なかなか乾かなくてニオイも気になる…」「夏のお風呂上がり、洗面所が暑くてせっかく汗を流したのにドライヤーでまた汗だくに…」。

私たちの暮らしの中で、浴室や洗面脱衣室といったサニタリー空間は、実は多くの「不快」が潜む場所です。このジメジメや暑さ・寒さを解消し、洗面脱衣室も含めた空間全体を、「一年を通して快適な空間」へと進化させることはできないか?

そんな想いから、パナソニック内で新たな開発プロジェクトがスタートしました。着目したのは、エアコン等で培ってきた「ヒートポンプ技術」です。しかし、振動するシステムを音が響かないよう天井裏に設置し、1台で「浴室」と「洗面脱衣室」の2室をコントロールするのは、並大抵の道のりではありませんでした。

企画、開発、営業。それぞれの視点から、プロジェクトに立ちはだかった壁と、知られざる開発ストーリーをお届けします。

商品の開発に携わった3名の社員
写真左から:小島 浩暉(商品企画担当)、松下 雄次(設計開発担当)、津田 佳奈(営業担当)

1 変わるライフスタイル、サニタリー空間の「不快」を見過ごさない

今回の開発プロジェクトは、どのような社会の変化やお客様のお悩みに着目してスタートしたのでしょうか?

小島(商品企画)最も大きな変化は共働き世帯の増加です。「家事をラクにしたい」というニーズが高まり、78.6%(※1)の共働き世帯で「部屋干し」が日常化しています。さらにここ20年で外気の湿度が上がり続け、日本の夏はよりジメジメと不快になっています。住空間は高性能に進化しているのに、浴室と洗面脱衣室の空気環境対策は取り残された状態で、洗面脱衣室で部屋干しをすると「洗濯物が乾くのが遅い」「部屋干し臭がする」といったお悩みが絶えません。この空間をもっと「快適」な場所に変えられないだろうかと、ここが最初の出発点ですね。

※1:当社調べ(N=186, 2025年4月時点)
インタビュー写真
現代の住まいの課題に着目したという、商品企画担当 小島

津田(営業)私も室内干しをしますが、従来のヒーター式バス換気乾燥機だと電気代が高く、洗面脱衣室に除湿機を置くと邪魔で子どもが触ってしまうストレスがありました。そういった日々の困りごとに対応できる変革をもたらす商品が必要だと私自身も強く感じていました。

小島そこで今回の開発プロジェクトでは、従来の「浴室空間で完結させる」という制約を突破し、対象を「洗面脱衣室」も含めたサニタリー空間全体へと広げるシフトチェンジを図りました。

津田洗濯機は基本的に洗面脱衣室に設置しますから、そこで洗濯を干して乾燥まで完結できれば、重い洗濯物を運ぶ手間がなくなり、家事動線が劇的に短縮されます。パナソニックの強みである「除湿技術」をサニタリー空間全体に活かすことで、従来にはない新たな商品が作れると考えたんです。

小島しかも、そういった家事を行う専用の部屋を設ける方も増えていて、その家事室を在宅ワークのスペースと兼ねる方もいます。そのような狭い空間のためだけのエアコンを追加するのは現実的ではありません。だからこそ、除湿や換気だけでなく、日々の生活スタイルに合わせて1台で色々な制御ができる商品を作りたいという想いがありました。

松下(設計開発)実は初めてこの企画を聞いたとき、正直「これは技術的なハードルが高いぞ」とひそかに震えていました(笑)。当時は私を含め、ほかのメンバーもサニタリー商品しか開発してこなかったため、まだヒートポンプの知見が十分でなく、自分たちで本当に開発できるか不安もありました。しかし、この常識を覆す画期的なシステムは、パナソニックのヒートポンプ技術がなければ絶対に実現できません。プレッシャーは当然ありましたが、最終的にはこの技術力でお客様の暮らしを劇的に変えられるならぜひ挑戦したいと、エンジニアとしての覚悟が決まりました。

インタビュー写真
日常生活での気づきからこの商品の必要性を強く感じたという、営業担当 津田

2 機器を「見えない場所」に収めることで生まれる顧客価値の追求

ヒートポンプという複雑なシステムを天井裏に収め、さらに1台で洗面脱衣室もコントロールするという高いハードルに対して、どのような課題がありましたか?

津田まず営業戦略上、価格とサイズはこれ以下に抑えたいという明確な条件がありました。住宅のユニットバスに設置しようと思うと機器は住宅の天井裏に設置できる高さにする必要があります。その限られたスペースにすべてを詰め込んでほしいと、開発の皆さんには無茶なお願いをしたと思います。

小島企画としても絶対に譲れないラインがありました。それが「しっかり乾燥させる能力」と「高い省エネ性」です。ユーザーの家事動線をラクにするための商品なのに、電気代が高いからと使うのをためらってしまっては意味がありません。通常のヒーター式と比べて消費電力も電気代も半分以下(※2)にするというスペックは、日々気にせず使っていただくために死守すべきポイントでした。

※2:メーカー試験条件によります 比較機種:バス換気乾燥機(FY-13UG6V 2015年6月発売)  ◎試験条件:28℃、60%、浴室サイズ1620 ◎衣類の重量:6kg ◎乾燥時間:衣類の重量が洗濯前に戻る時間(乾燥率100%) ◎6㎏衣類の内訳:バスタオル4、ジャージ上下1、パンツ4、Tシャツ4、Yシャツ4、靴下2、パジャマ上下1、ジーパン1、ズボン3 ◎実測した消費電力(FY-13UG6V:4316W /日 FY-09KXU2WT1:1634W /日)をもとに、電気料金:家電公正取引協議会 2023年7月時点 31円/kWh(税込)で算出

松下営業と企画の両方からのプレッシャーは凄まじかったです(笑)。サイズの制限が極めて厳しい中で、熱交換器のコイルなどを限界まで小型化しなければならず、部品選定も「あちらを立てればこちらが立たず」の連続でした。仮組みも含めると5回以上は本体の試作機を作り直しましたね。そして、最後まで我々を苦しめ、最も難しかった課題が「音」の問題でした。

機器本体写真
機器本体。部品を小型化し、住宅躯体内に収まるサイズを実現

津田社内の検証設備では問題がなくても、実際に住宅に組み込んでテスト稼働させてみると、浴室は静かでも2階にある寝室に音が響くことがわかりました。寝ている間の時間を有効活用して乾燥させたいのに、上の階でご家族が寝られないのでは本末転倒ですから、すぐに開発にフィードバックしました。

松下この課題には本当に頭を抱えました。コンプレッサーを伴うヒートポンプシステムをすべて天井裏に収めなければならず、部品単体の音だけでなく、配管や筐体、天井材と組み合わさることで低周波や共振音が発生してしまうんです。すべてを一発で解決する魔法はなく、実際にユニットバスの天井裏に潜り込んで吸音材の材質や防振ゴムの硬度の変更をひたすら繰り返しました。各部門で日々激しく意見をぶつけ合いながら、階段を一段一段登るように問題を乗り越えていきました。

インタビュー写真
実際に採用された部品を手に試作段階を振り返る、設計開発担当 松下

3 地道な試行錯誤が生んだ「除湿乾燥」と「2室コントロール」

数々の難題を乗り越え、スリム化と高性能化を両立できた設計上の工夫や、ヒートポンプだからこそできた画期的な機能について教えてください。

松下商品の特徴を一言でお伝えすると、従来のヒーター式は「ドライヤーのような熱風をあてて、高温で水分を蒸発させて乾燥させる」のに対し、この商品は「空気中の水分を直接取り除いて、除湿しながら優しく乾燥させる」というのが決定的な違いです。吹き出す風の温度が低いので、熱に弱いデリケートな衣類なども傷みにくいんです。

活用イメージの写真
洗面脱衣室での活用イメージ。厚みのあるタオルなども乾かせる

小島空間全体を除湿するので乾燥ムラが少なく、乾燥時間も短縮できました。また、ヒーターを使わず、除湿する過程で排熱を再利用して風を温める「再熱除湿」という仕組みを採用しているのも大きなポイントです。このように空間全体の除湿と再熱除湿を組み合わせたことによって、従来のヒーター式と比較して年間約3万円の電気代の節約となる高い省エネ性を実現できました(※3)。これは年間約454kgのCO2削減(※4)にもつながり、脱炭素にも大きく貢献できます。

※3:※2と同条件による数値。使用環境等により数値が異なります。 ※4:※2の条件で実測した消費電力(FY-13UG6V:4316W /日 FY-09KXU2WT1:1634W /日)をもとに、CO2排出係数から算出。CO2排出係数:0.464kg―CO2/kWh

津田実生活での使用を想定した目標乾燥時間に応えるため、開発陣は2〜3週間、毎日ひたすら洗濯をしては重さを測って乾き具合のデータを取るという地道な作業をしてくれました。シミュレーションだけでは素材による違いまでは分からないからと、本当にフル稼働で果てしない繰り返し作業になりました(笑)。

松下はい、あの時は社内で一番洗濯をしていた自信があります(笑)。その泥臭い検証の甲斐あって、6kgの衣類乾燥において、従来の電気式では28℃・60%環境時に約6時間かかっていた時間を、「約2時間」も短縮することができました(※5)。それから、もう一つ悩まされたのが風路の設計です。本体のスリム化を維持しながら、浴室と洗面脱衣室の2部屋へ狙い通りに風を送らなければなりません。運転モードごとに風路を複雑に切り替えますが、脱衣室だけに風を出したいのに吹出し口の隙間から浴室へ風が漏れると、不快な風切り音が発生してしまいました。

※5:※2の条件の場合。使用環境等により数値が異なります。

松下風路切り替え用のダンパーに関しては、試作品を10パターン以上作って実際にユニットバスで音を聞き比べ、最適な形状にたどり着きました。「絶対に1台でこの空間を変えてみせる」というチーム全員の執念が、これまでにない全く新しい気流と除湿のシステムという『突破口』を開いたのだと思っています。

乾燥率と感想時間に関するグラフ
従来の電気式バス換気乾燥機と比べて、電気代を抑えながら乾燥時間を約2時間短縮(※6)
※6:上記は一例であり、ヒートポンプ特性として、脱衣室などや浴室の温度が低くなるにつれ能力が低下します。
当社の電気式バス換気乾燥機(FY-13UG6V)との比較。
◎試験条件:28℃、60%、浴室サイズ:1620 ◎衣類重量:6㎏

4 サニタリー空間を「不快な空間」から「快適な居住空間」へ

チームの執念が結実したこの新商品を通じて、これからの住まいづくりにどのような新しい価値を提供していきたいとお考えですか?

小島今回の空間除湿換気扇によって、単に洗濯物を乾かすだけでなく、サニタリー空間全体の「湿度」や「温度」をコントロールして快適にするという新しい価値を形にすることができました。昨今は住宅の高気密化や気候変動などで、お客様の空気環境に対するお悩みも変わってきています。だからこそ、我々メーカーが「サニタリー空間はもっと快適にできる」という新しい提案を積極的に発信し、変わりゆくお客様のお悩みに先回りして応えていく。それが、これからの住まいの新しいスタンダードを作っていくと信じています。

津田私も住宅に設備として導入する以上、日々の家事をラクにし、煩わしさを解決する商品にしたいと思っていました。今回の空間除湿換気扇は私自身が「実際に自分の家で使いたい!」と心底思って作った強い思い入れがあります。これがあれば、洗面脱衣室で洗濯してそのまま干すことで「家事動線」が劇的に短縮されますし、夜間に干しておけば朝には乾くので、隙間時間の有効活用にもなります。日常の家事を少しでも短くして、空いた時間を別のことに使っていただけるような生活が当たり前になれば、すごく幸せですよね。

洗面脱衣室の写真
メンバーの想いを注ぎ込み、家事ラクと快適性を両立

松下そうですね。洗濯がラクになるだけでなく、空間自体の心地よさも提供できるのが最大の強みです。今までのバス換気乾燥機はヒーターの温風を出すだけでしたが、この商品は除湿、換気、微冷房、微暖房もできます。私自身、実生活で浴室や洗面脱衣室は夏暑く冬寒くて「必要な時以外は居たくない場所」でした(笑)。しかし、このシステムを搭載することで、そういった不快な場所を「快適に過ごせる空間」に変えることができます。

小島ぜひこのテクノロジーを取り入れて、生活の中で我慢したり躊躇したりしていたことを解決して、日々の生活を軽やかに楽しんでいただきたいですよね。

松下私も設計担当として、サニタリー空間の不快を根本から解消し、ご自身の生活空間や快適環境の幅を大きく広げていただきたいと願っています。これからも、パナソニックが培ってきた様々な技術を融合させ、暮らしの常識を覆すような商品開発に挑戦し続けていきたいと思います。

メンバー写真
松下 雄次 Yuji Matsushita
三重県出身35歳。2014年パナソニック エコシステムズ(株) (現 パナソニック HVAC&CC ㈱)入社。入社後ジアイーノの設計開発を経て、2023年から現在まで空間除湿換気扇の設計開発を担当。
津田 佳奈 Kana Tsuda
愛知県出身32歳。2016年パナソニック エコシステムズ(株)(現 パナソニック HVAC&CC ㈱)入社。住宅設備商品の営業を担当。
小島 浩暉 Hiroki Kojima
愛知県出身 31歳。2020年パナソニック エコシステムズ(株) (現 パナソニック HVAC&CC ㈱)入社。現在は住宅・非住宅両方の領域で換気と空質に関わる設備の商品企画を担当。
※ 記事中に記載の情報は、2026年6月時点のものです。
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